「那月(なつき)先輩かっこいいな〜」
これが、あたしの口ぐせ。
息をするように那月先輩のことを口にしている。
那月先輩は1つ歳上の高校3年生。
バスケ部で活躍しているイケメン中のイケメンなのだ。
……はあ、先輩の顔を思い浮かべるだけで鼻血が出そうだよ。
「バカ宮、その変な顔やめろ」
「なによバカ宮って!!」
「お前の名字はバカ宮だろ?」
「違いますけど! 高宮(たかみや)ですけど!」
冒頭の「那月先輩かっこいいな〜」というのは、教室での独り言だ。
休み時間に、ひとりで、言っていたのだ。
……それなのに。
「うるせーな。 迷惑だろ」
「アホ葉が絡んでくるからでしょ!」
「アホ葉いうな青葉(あおば)だわバカ宮!」
このアホ葉こと、青葉という男が突っかかってくるから厄介なのだ。