闇の鬼~影を纏いし者~

「仕方ないわね。一度次郎さんの家に戻りましょう。移動先に心当たりがあるといいんだけど。」


僕達は、社の扉を閉め、祠を出た。
山を下り、改めて鏑木の家を眺めた。


「ここで、代々祠を守ってきたのか。こんな事は続けちゃいけない。僕達で終わりにしよう。」


咲夜も、夏子も、無言で頷いた。
刀は見つからなかったが、僕達で終わりにする、その気持ちは前より強くなった。


「それにしても、どこに行っちゃったんでしょうね? ちゃんと居てくれないと困るじゃないですか! 」


帰り道、夏子は移動してしまった刀に怒っている。
何に対しても、真っ直ぐ向かう夏子の性格は羨ましい。


九栗の家に着き、次郎さんに祠であったことを話した。


「なかったって?!

いや、ちゃんと納めた。あの扉は、運び手しか開けられない。いや、開かないんだ。悪戯できるような物ではない。」


次郎さんも、刀が無いなんて、思っていなかったようだ。
暫く思案していたようだか、何か思い当たったらしい。


「移動しそうな場所か。心当たりがない訳では無いが、今日は時間が遅い。また、明日来なさい。準備をしておこう。」


心当たりがあるのか。
僕達は、お礼を言って、明日朝から来ることを伝え、朱桜の家に戻った。




「いい匂い! 」


戻っての開口一番がこれか。
そういえば、昼食を忘れていたな。


「おなかすいたぁ! 私達、お昼ご飯も忘れていたんですね! ありえない!! 」


三食食べる夏子にしたら、珍しい事だな。


「おかえりなさい。随分頑張ったのね。明日からは、お弁当を用意しましょうね。
何があったかは、今は聞かないわ。先に食事にしましょう。」


千影さんの思いに感謝しなければならない。
ここまで良くしてもらえるとは思ってもいなかった。


「きゃー! 今日も素敵! 私、毎日こんなに美味しい物食べてたら太っちゃいますよ! ちょっと運動もしないと駄目ですね! 」


食べるのは止めないんだな。
食べた分のカロリーを消費するのは楽じゃないぞ。


「さあ、座って。」


みな、席に着き食事を始めた。
食事の間は、他愛もない会話で話が弾んだ。
なにより、千影さんが楽しそうでよかった。


「華があっていいわね。楽しい時間を、過ごせて幸せよ。
ゆっくりしなさいね。後で、書斎に来てくれればいいわ。」


千影さんは、先に食事を終わらせ、部屋に戻って行った。