「まゆ、すごいね…」



ふと今日のことが頭をよぎった。



「えー、何が?」



手を動かしながら応える。



「だって、放課後は小道具の方してるのに、次の日には劇のセリフとか完璧じゃん。それでいて小道具の方にも指示出してさ〜」



私もそんな風にできたらいいのに…。



「暗記が得意なだけだよ!それに、まゆ、結構みんなに助けてもらってるよ?」



顔を上げて、否定するように顔の前で両手を振る。



「……私が見る限り全部1人でやってるけどね?それに、今日の喧嘩も解決してたし!」



おまけみたいに言っちゃったけど、まゆの1番すごいところはそこ。



私が1番欲しい能力。



「あれはとっさに動いちゃっただけだって!つむぎもできるよ!言ってみたらみんなわかってくれるよ?」



それはないかな〜。



私はまゆじゃないから。



まゆみたいに全部上手くはできないよ。



「そうかな〜?」



苦笑いをして資料の方にもう1度目を向ける。



重要事項を書き出そうとして、鞄からシャーペンを…。



「………あ、私教室に筆箱忘れた!」



ガサガサ音を立てて探してもないから多分確実。



そういえば、机の上に置きっぱなしだったような…。



「ばっか〜。行っておいで!」



「うん、行ってくる!」