友情は初恋と引き換えに

「そんなはず…」



そこまで考えて、10年前の記憶が蘇り始める。



最初に出会った時、私とまゆの質問に対しての不自然な返答。



なぜか私の恋のことをなんでも知っていて…。



それに、誰も知らなかった鐘の恋の話まで知っていた。



今考えると、それら全てが不思議。



「あの、俺も聞いた話なんで確かじゃないですけど……」



「なんでしょう?」



「俺、この学校の生徒だったんです。学生時代時代に先生に聞いた話で、『この学校の鐘には妖精がいる』って…」



「妖精……?」



あのおじいさんは妖精…?



でも妖精なんて存在するはずない…。



「すみません!なんかファンタジーでしたよね!」



「い、いえ…」



でも妖精か……ふふっ…なんだか似合わないや。



多分だけど、妖精じゃなくて……鐘の分身とかじゃないかな?



そっちの方がしっくりくるし、辻褄が合う。



私はもう一度鐘の方を振り返ってぺこりとお辞儀をした。



『ありがとう』



心の中でそう言いながら。