「先生、産休取ったら戻ってくるんでしょ?」



「ううん……戻ってこないつもり。子育てで大変になるから、完全に辞めようと思ってるの」



期待してくれていたのに…ちょっと申し訳ない。



「そうなの⁉︎先生の授業わかりやすいし楽しかったのに〜」



そう言われると、私も授業したかいがあったよ。



「ふふっ…ありがとう。先生もみんなと離れるの寂しいよ〜。せめて最後まで担任していたかったな〜」



私がいなくなることで、担任の引き継ぎは副担任の先生が入ってくる。



本当に、できることなら卒業まで見てあげていたかったな…。



「っていうか先生、なんでこんな微妙な日に辞めるの?あと少しで冬休みだし、そこまで先生していけばいいのに…」



「…………ちょっとね…今日は私にとって思い出の日なの。だからこの学校と離れるならこの日って決めてたんだ〜」



そう、今日は10年前のあの日と同じ。



私にとって大切な思い出の日。



だからこの学校を離れるなら今日。



そう決めていた。