ふたりだけのアクアリウム



それから熱帯魚は2種類選び、どれも世話のしやすい初心者向けのものにした。
小さくてヒラヒラ泳いでいて、見てるだけでも可愛らしい。


むふふ、とニヤニヤを抑えきれないでいると、お会計してくれた店長さんが私と同じようにニヤニヤした笑みを浮かべて、沖田さんの肩をさわさわ撫でた。


「セッティングはいっちゃんがやってあげるんだろ?初めての子は分かんないだろうから、手取り足取り教えてあげないとな」

「そうですね……。…………店長、何か勘違いしてませんか?水槽の話ですよね?」

「まぁまぁ。せいぜい同じ趣味を楽しみながら部屋でイチャつくといいさ。俺は応援してるぜ!」


と、呆れる沖田さんにまたしても店長さんは昭和感を全面に押し出した舌出しテヘペロを繰り出し、完全に恋人だと勘違いしていることを確定させてしまった。


「いつものことだから。そのうち誤解は解いておくよ。行こっか」


きっと店長さんのあの調子だと、いつもあんな感じで冗談を軽いノリで言ってくるに違いない。
沖田さんは慣れた様子だった。


誤解……か。
そりゃそうか。
会社の同僚ってだけだものね。


重い荷物を持って、少し前を歩く沖田さんの後ろ姿を眺める。
僕が持つからと、私には軽いものしか持たせてくれなかった。

そういう小さな優しさがけっこう嬉しいってこと、きっと彼は知らないんだろうな。

会社では見せない笑顔が私を癒してるってことも。


目立たない人だと思ってたのに、もう私には彼が目立って見えてしまっていた。