ふたりだけのアクアリウム



沖田さんがよく行くというお店は、ペット用の金魚や熱帯魚、そして名前は分からないけどかなり大きなヒラヒラのヒレがついた派手色の魚など(尋常じゃないくらい高価で目玉が落ちるかと思った)、要するに魚専門店?のようなお店だった。


店内は少し薄暗くて、でも店内に置いてある水槽にはしっかりライトがついているので魚たちは浮かび上がって見える。

至るところから水音が聞こえて、ここはかなりの癒し空間かもと思った。


日曜日だからなのか、お客さんはけっこうあちこちにいて繁盛している。

そんな中、カウンターの奥から一際大きな声が聞こえてきた。


「お!?いっちゃんか!?」


いっちゃん!?


すっかり自分が呼ばれた気になって「はいっ」と条件反射で返事をしたら、となりで沖田さんがブッと吹き出した。


あれ?と戸惑っているうちに、強面のガタイのいい中年のおじさんが大股でこちらへやって来た。
ものすごい迫力。ものすごい圧。
しかし強面だと思ってたのに、私たちの前に歩み出てきたらパッと笑顔になった。


「どーもどーも!いっちゃん、随分と可愛い子連れてきたな」

「こんにちは、店長」


挨拶している沖田さんを見て、あぁそうだと自分の記憶力の低さにガッカリしていた。

沖田さんの名前、一路だった。
いっちゃんって呼ばれてるって言ってもんなぁ。


「昔っからここに通ってるけど、女の子を連れてきたのは初めてじゃないか?」

「まぁ、そうかもしれないです」

「コレだろ、コレ」


店長さんは昭和感丸出しの彼女サインである小指をわざとらしく立てて、バチッとウィンクしていた。
一方の沖田さんは苦笑いするのみ。


「初めまして、佐伯逸美です。今日は沖田さんにお願いして、熱帯魚飼うのに付き合ってもらうことになって。よろしくお願いします」


このタイミングを逃しちゃイカンといそいそと自己紹介すると店長さんは嬉しそうにニカッと笑い、そうかそうかと私の背中を何度も軽く叩いてきた。


「いいねぇ〜!いっちゃんの知り合いなら安くするよ!」

「ありがとうございます」

「設備は持ってるのかい?」

「まったくの初心者です」