ふたりだけのアクアリウム



沖田さんの車の中は、余計なものが何も置いていないシンプルな空間になっている。
それはまさに、一度だけお邪魔した彼の部屋みたいな感じ。

なんというか、非常に落ち着く空間なのだ。


「アパートまで来させちゃってすみません……。……………………あ」


車に乗り込んで、開口一番。
「あ」という不自然な言葉を残し、まじまじと運転席に座る沖田さんを眺めた。


「え?服に何かついてる?」


目を丸くして、自分の服を見下ろして何かを払う仕草をする沖田さんに、「違いますっ」と首を振って見せる。


「意外とオシャレだなぁと思って……」

「服が?」

「会社で見るより爽やかな感じ」


ネイビーのリネンシャツに、中にはボーダーのカットソー。下はよく見えないけど、たぶんアンクル丈のチノパン。
体に合うサイズのものを着用していて、清潔感があって素敵だった。


しかし、私はいつもちょいちょい失礼なことを彼にポロッと言ってしまってるらしい。


「意外と……会社で見るより……」


沖田さんにしては珍しくジロッと横目で睨んできたので、慌てふためいて謝り倒す。


「ごご、ごめんなさい!スーツが似合ってないとかそういうことじゃないんです!!ほんっとに私のこの口は余計なことばっかり!本当にすみません!!」

「あはは、こんなことで怒るわけないでしょ。冗談冗談」


私の反応が面白かったのか、彼は楽しそうに笑っていた。
その顔は、やっぱり会社で見る笑顔よりも何倍も明るくて、おおらかで淀みがない。

この顔が会社でも見れたらいいのに。