ふたりだけのアクアリウム



日曜日。
沖田さんと買い物に出かける約束をした日。

前日にこれといった連絡も来なかったので、もしかしたら仕事で疲れて約束のことを忘れてしまったのかも、と思っていたのだけれど。


掃除も洗濯もだいたい終わり、部屋でコーヒーを飲んでいる時にスマホが鳴った。

電話番号だけ交換した、沖田さんからの着信だった。


一瞬ドキッとしたものの、落ち着けと自分に言い聞かせて電話に出る。


「もしもし、佐伯です」

『あ、こんにちは。沖田です』


電話で聞くと、普段聞く沖田さんの声よりずっと低く聞こえた。
でも、耳障りのいい優しい声。それは変わりない。


『昨日、連絡するか散々迷ってやめたんだけど……。出かける約束したのって、今日でいいんだよね?』

「はい!今日で大丈夫ですっ。すみません、私から連絡するべきでしたよね……。沖田さん疲れてるかなぁと思って、迷惑だったらどうしようとか考えちゃって……」


厚かましいと思われたら嫌なので、私も散々迷いに迷ってやめたから、同じ気持ちでホッとした。


『それじゃあ、今から迎えに行くね。アパートに着いたら連絡する』

「はいっ。待ってます」


電話を切って、ハタと気づく。

ヤバい。スッピンだ。
しかも服も超適当。
これで出かけるのはあまりにも女子力が低すぎる。


仕事に行くのよりも少しラフな無難な服を引っ張り出し、フルスピードでメイクを施して着替える。


隅々まで部屋の掃除をしたため、雑にぐるぐるまとめてお団子にしていた髪の毛を解いてクシを通していたら、沖田さんから『着いたよ』と電話が来て慌てて家を出た。