ふたりだけのアクアリウム



私の醸し出す空気を感じ取ったのか、山口は乗り出していた体をソファーに沈め、憮然とした態度で「うーん」とアゴをさすった。


「なるほど。俺は佐伯にとっては対象外らしいな」

「…………………………ごめん。本当に……ごめんね」

「ううん。こればっかりは仕方ない。ていうか、なんとなく分かってたし。お前にそんな気は無いってこと」


山口は話しやすい同期で、明るいし話していても楽しい。
だけど、異性としてどうかと言われるとなんとも答えにくい。

仮に手を繋いでも、抱きしめられても、胸が踊るとは思えなくて。

それはたぶん、もう彼は「友達」になってしまったからなのかもしれない。





恋愛がどこから始まるのか、それはいつも曖昧だ。


好きになるのはいつだって「いつの間にか」ってやつで、気がついたらその人のことを考えて、その人を目で追って、その人と話したいと思う。

キッカケらしいキッカケなんて、今まで見つけられた試しがない。


ひとつ言えるのは、一緒にいて落ち着ける相手がいいなと思ってることだ。


何も話さなくても、何もしなくても、ただ隣にいるだけで安心できるような、そんな人。
どちらかに頼るんじゃなく、支え合う相手がいい。





茅子さんの言う運命の人は、どうやったら分かるのかな。
会った瞬間に分かるのなら、苦労しないのに。


迷ってるうちは、ひとりでいる方が気が楽だ。