ふたりだけのアクアリウム



今日ってエイプリルフールだったっけ?


いそいそと手帳を取り出して日付を確認しようとして、ハタと手を止める。
いやいや、クリスマスまであと2ヶ月なんだからエイプリルフールなわけがない!


「そういう冗談言ってると、本当に好きな子に相手にされなくなるよ?」


ため息をついて諭すように語りかけると、彼は「は?」と身を乗り出してきた。


「冗談?そんなわけないだろ。そこまで空気読めなくないわ」

「付き合うって…………男女交際?」

「当たり前だろ。27にもなってそんな初歩的な確認するか、普通」


山口はもうすでに平らげたサーロインステーキセットの鉄板に残ったコーンを、フォークでちびちび刺しながら


「でなきゃ好きでもない女、ご飯に誘ったりしないし」


と言った。


━━━━━正直言って、全くもってちっとも気がつかなかった。
彼が私に、そういう感情を抱いていたということを。


私が何も言わないからか、今度は山口は「教えてやるよ」とでも言うようにコーンが刺しっぱなしのフォークの先を向けてきた。


「男ってのはなぁ、煩悩の塊なんだよ。下心無いと食事に誘ったり、部屋に誘ったりしないわけ。俺はずっとお前のこと好きだからちょこちょこアプローチしてたんだし」

「そ、そうなの……」


悪友だとか、同期のよしみで誘われてるんだとばかり思っていた。
じゃあ私に会うために事務所に出入りしてたってこと?


ドキドキするというよりも、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。