ひと時のサボりを満喫してからは、それを取り戻すべく本来の仕事へと戻った。
必要なFAXを送ったり、発注書に記入漏れがあったところへ問い合わせの電話をかけたり、クリスマス商戦に向けたオリジナルスイーツのアンケートを取引先に郵送するために封詰め作業をしたり。
事務員の仕事は実に地味なのである。
デスクの上に置いている卓上カレンダーを見て、もうそんな時期かと息をつく。
クリスマスまであと2ヶ月ちょっと。
そりゃあ、隣のデスクの後輩がウキウキしながらネットでクリスマスデートの勝負服を検索するわけだわ。
『今年のクリスマスは、一緒に過ごせると思うから』
脳裏にピリッとした刺激のある電流みたいに、あの人の言葉がよぎった。
バカだな、と自分で自分を笑ってしまった。
今さら思い出したってどうにもならないのに。
浮かれていた数ヶ月前の私は、今の私から見ると滑稽だ。
お飾りでしかないイベントに胸を踊らせていたなんて、冷静になるとこんなにも無関心なんだ。
私が仕事を終えて、デスクの上を片付けた頃。
今日1日ほとんど不在だった綱本係長と、たまたま帰社時間が重なったのか沖田さんも一緒に事務所へ戻ってきた。
綱本係長はやけにギラギラとしたオーラを身にまとっていて、よっぽどいいことでもあったのか笑顔だった。
確か彼は歳は30代後半くらいって聞いたことがあったけど、実年齢よりも少し老けて見える。
きっと、契約を取ったって大喜びしてるのかも。
その隣にいた沖田さんは、心なしかあまり元気が無いように見えた。
同僚に何か声をかけられて笑ったりしているけど、先週彼のマンションで素敵だと思ったあの笑顔ではなかった。
また契約を取り損ねたのかな、と失礼なことを思ってしまった。



