その後、しばらくしてから目を覚ました綱本係長。
会議室に響き渡るほどの「ヒイィィィッ」という悲鳴を上げ、怯えたように沖田さんを見ていた。
よっぽど恐かったのか、痛かったのか。
「係長。本当に本当に申し訳ありませんでした。お体は大丈夫ですか?」
沖田さんはいつもの彼に戻っていて、低姿勢で係長へ謝っていた。
謝ることないのに、という私の思いは沖田さんとすれ違い、彼は心底申し訳なさそうに謝罪の言葉を繰り返す。
「自分でも抑え切れなくなって手が出てしまって、感情のコントロールが出来ませんでした。すみません……」
「……腹が痛い」
「あっ、そうですよね……すみません……」
スリスリとお腹の辺りをさする係長へ、沖田さんは何度も頭を下げる。
何度かそのやり取りをしたあと、係長は私の存在に気づいたらしく目を細めた。
「君もいたのか。まさか、ふたりして俺を嵌めたわけじゃないだろうな?」
「え!?そんなまさか!!」
「彼女は僕の心配をしてくれただけなんです」
全力で否定する私にかぶせるように沖田さんも加勢してくれた。
やや苛立ったように舌打ちをした綱本係長は、床にあぐらをかいてふんぞり返る。
「まあ、どっちだっていい。暴力行為は立派な犯罪だからな。形勢逆転だぞ、沖田」
この後に及んでこの態度。
これは性根が腐ってるとしか思えない!
「あの!」と啖呵を切ろうとしたら沖田さんに手で制されてしまい、仕方なく口を閉じる。