寂しくないわけじゃない。
悲しくないわけじゃない。
会いたいって思う時もある。
だけど、それはこの数ヶ月で少しずつ形を変えていった。
寂しくて悲しくなるから会いたいのか、彼のことが好きだから会いたくなるのか、誰でもいいから愛してくれる人がいてくれればそれでいいのか。
自分でもよく分からなくなっていたのだ。
「私はねぇ、女は愛されてナンボだと思うのよ」
舌っ足らずな話し方で茅子さんが半分しか開いていない目を私に向ける。
顔は真っ赤っかだ。
「追いかけるのよりも追われる方が絶対に幸せよ。愛されるよりも愛したいなんて、それは両思いになってから言えることだと思うのよね」
「でも自分のことを想ってくれる人なんてなかなか見つけられないですよ」
「何言ってるのよ、いっちゃん。あなた可愛いんだから自信持たなくちゃ!いないの?付き合いの長い幼なじみとか、街で偶然再会した同級生から連絡先聞かれたとか、合コンで会った人が以前にも会ったことがある人だったとか!」
「あはは、茅子さん。ドラマの見すぎですよ」
いや、漫画にハマってるって話してたから、漫画の読み過ぎかな?
なんにしろ、茅子さんの妄想トークはいつものことなので面白くて吹き出す。
「意外といるものよ、運命の人って。気づかないうちにそばにいて、いっちゃんのことを見守ってくれてるかもしれないよ……」
茅子さんが言った「運命の人」という言葉は、どこか熱を帯びていてくすぐったい気分になった。
『きっとここで会ったのも何かの縁…………いや、運命かもしれない』
そういえば、あの人はそんな風に私との出会いを称していたんだっけ。
運命なんて言葉にほだされて、夢を見てしまった。
だからもう一度信じるのには、少し時間がかかるかもしれない。



