「もうすぐ始まる。」
腕時計を確認した蒼が、小さく呟いた。
「何が始まるの?」
なんのことか分からない私は
首をかしげる。
「打ち上げ花火。」
「花火?!!」
そっか!
そうだよ!!
忘れてたけど、…お祭りといえば
打ち上げ花火!!
楽しみだなぁ…早く見たい!
「場所移動するぞ。」
蒼は…私の手首を掴み、
早足で人混みの間を通り抜ける。
…大きな背中。
掴まれた手首が熱い。
…入学式のときも、キミはこうして
手を引いてくれたね。
あのときは、思いもしなかったよ。
キミと一緒に…夏祭りに行く日が来るなんて
…キミのことを、好きになるなんて。
私たちは、人混みから離れて
屋台の裏に広がっている芝生に腰を下ろした。
「間に合ったね。」
「あぁ。」
周りには、誰もいない。
怖いくらいの静寂が、私たちを包み込む。
…賑わう人たちの声が、
…どこか遠くで聞こえるみたい。
なんでかな…?
いつもより、距離が、…近い気がする。
ほんの…5センチ。
手を伸ばせば届く距離に、蒼がいる。
急に恥ずかしくなって、俯いた
次の瞬間。
ヒュ〜バン!!
