「・・・・・・・・・弥生?」
オレは弥生の額から指を離すと、今一度、弥生の顔をまじまじと見つめた。
「なあに?諒ちゃん。」
不思議そうに、けど面白そうに尋ね返してくる弥生。
その朗らかでにこやかな表情に、オレは心臓を鋭利ななにかで刺されたような衝撃が走った。
「・・・・・・・・弥生?」
もう一度、そう呼ぶ。
すると今度は訝しげに目の前の弥生が尋ねてきた。
「もう、なんなのよ?なんかおかしな諒ちゃん!」
その言い方に、ちょっと拗ねたような唇に、でも優しい瞳に、オレは見覚えがあった。
「――――――――――――――――――――――――――弥生っ!!」
「え?わっ!ちょ・・・・・・・・・・」
思わず抱きしめたオレを、弥生ははじめはびっくりしたように手で押し返そうとしてきたけれど、やがて、その両腕はオレの背中にまわり、右手は、まるでオレを慰めるように大きな動きで撫でてくれた。
慰めなきゃならないのはオレの方なのに、弥生は今の事態を把握していないというのに、
それでも優しく、ただ優しく、オレを抱きしめてくれた。
オレは腕の中に弥生がいること、
そして、弥生の腕の中にオレがいることが、
なんと表現したらいいのかが分からないほどに、嬉しかった。
これ以上なにも望まない。それほどの喜びを、感じていた。
そう、
もう死んでもいいと思えるほどに、幸せだった。