プレハブ小屋まで駆けていくと、扉が開け放されていて、中からは細い光が漏れていた。


「・・・弥生?」


声をかけながら中を覗くと、細い光がこちらに向けられた。


弥生が懐中電灯の灯りをオレに向けたのだ。


「あ・・・・諒さん。」


暗い中、ホッとしたようにオレの名を呟いた弥生を抱きしめたいと思っても、誰にも責められないと思う。


オレはそんな衝動を見逃すために、奥歯を噛み締めた。



「こんなとこにいたのか。」


別に怒ったわけではなかったのだが、ぶっきらぼうな言い方になってしまう。

弥生がここにいた安堵感と、あんなに焦ってた自分を恥ずかしく思う気持ちが、弥生に対してそんな口調にさせたのだ。


だが弥生は、オレが怒っていると感じたのだろう、まるで叱られた犬のように、あからさまにしゅん・・としてしまった。



「いや、別に責めてるわけじゃないから。家じゅう探しても姿が見えなかったから心配しただけで・・・・・」


オレはそう説明したが、弥生はまたもや力弱く、

「心配かけてしまって、すみませんでした・・・・」

と謝るだけで。


オレは、すっかり元気をなくしてしまった弥生を取りなすように、必要以上に明るく話しかけた。


「それで、アルバムは見つかった?」

「いえ・・・・」

「じゃあさ、オレ家から持ってきたから、それを見なよ。ここ暗くて埃っぽいし、はやく戻ろう?」


なるべく優しく言って、弥生の懐中電灯も優しく奪い取って、オレは弥生を促した。



オレの誘いに素直に従ってくれた弥生だったが、まだ、どこか心が落ち着かない・・そんな様子を見せていて、
それが、オレの気持ちをまた不安に引きずり込もうとしていた。