「……でも、よかったと思ってるよ」
はぁ…とため息をついたソウくんは言った。
「え……?」
「商店街行って、お前のこと、知ってる人たちに会った」
「………」
「道、教えてもらって、お前が住んでた家にも行ってきた」
「………」
「お前のこと、全部わかるわけじゃねぇけど。
でも、お前が住んでた街、ちゃんと見れてよかったと思ってるよ」
ソウくん………
「………う、ん」
「さ、帰るか。杏」
ソウくんはゆっくりと手を差し出した。
「…うん」
私もその手に自分の手を重ねた。
どうか、この手をずっと繋いでいられますように。

