「杏?」 「ん?」 私は胸に顔を埋めたまま返事した。 「~~~~」 耳元で囁かれた言葉に涙が溢れた。 「今まで我慢させてごめん。 泣かせてやれなくてごめんな」 「気づい、てたの?」 きっと、今困ったように笑っているんだろうな。 「また、会いにくるから」 「うん」 「その時に泣けよ。じゃないと涙拭ってやれない」 「うん」 「他の奴になんて、拭わせたくない」 「うん」 当たり前だよ。 「涙をみれるのも、杏の涙の原因も俺じゃないと嫌だから」 「うん」 私だって、嫌だよ。