………行かなくちゃ、だよね。 ソウくんの部屋の前で立ち止まる。 ノックしようと出した手を引っ込めて。 また出して。引っ込めて。 3回くらいそれを繰り返し、私は意を決してノックした。 「母さん?」 「…………」 私は、黙ってしまった。 早く、言わなくちゃ。 "杏樹だよ"って。 「…………ぁ」 「杏樹?」 掠れる声を出しかけた時、中から聞こえてきた自分の名前。 そしてそれは、いつものあだ名ではなかった。