ザッザッ 「……いた」 道路から砂浜に行く階段に座って、海を眺めているソウくんを見つけた。 「………ソウ、くん」 「………遅えよ」 「うん、ごめん」 私はゆっくり近づいて隣に腰を下ろした。 「フラれた」 「うん」 「手術するって」 「うん」 「アメリカだって」 「うん」 「なぁ、杏樹」 ソウくんが私を『杏樹』って呼んだのは、いつぶりだろう。 怒ったとき、辛いとき。 それ以外はいつも『杏』って呼ぶから。 「ん?」 「俺は、どうすればいい」 こんな弱々しいソウくんは初めてだった。