チュンチュン

「ん…もぅ、朝……?」

起きなくちゃ


タンタンタンタン

昨日駆け上がった階段を下りていく。


ガチャ

「………!杏樹⁉︎」

リビングに入ると、紗江さんが急いで駆け寄ってきた。


「紗江、さん…」


「大丈夫⁉︎」


「…はい、ごめんなさい」


「いいのよ、なにかあったら、言うのよ?」


「………はい」

私は、どうしてこんなにも優しい人を『お母さん』と呼べないのだろう。

この人がそう呼ばれることを望んでいるなんて、誰よりもわかっているのに…。