「…兄さん…どうして」

 わからないことがわからなかった。

 こいつらの話は本当かもしれない。

 もしかしたら本当に人間を殺さず、彼女の滴を見ることもなくなるかもしれない。

 だけど、それでは二人だけでは生きられないじゃないか。

 僕は世界で、彼女と二人、何にも邪魔されることなく平和に静かに生きていないだけなんだ。

 その為なら、人だって殺す。

 自分の手がどれだけ血に汚れたって全く構わないし、覚悟はできてる。

 それなのに、どうして。

 君はまた、名前も知りたくない液体で頬を濡らすのか。