『結果は、どちらも最終選考には進めなかった。

コンクール後、アランと私はお互いの健闘を讃えて「懐かしい土地の思い出」を弾き合った。

共に音を重ねる喜びと、向けられる笑顔の愛しさを噛みしめながら、過ごした日々。

2年間の留学生活は、決して楽ではなく、むしろ辛いことの方が多かったが、それに耐えて頑張ることができたのは、良きライバルであり、愛しい人が側にいたからだと、思う。

束の間の幸せだった。

留学終了間近に、私は父の事業が傾き、帰国を余儀なくされ、志半ばにして留学を中断し帰国した。


「貴方は最後まで頑張って。いつかまた、『懐かしい土地の思い出』を弾きましょう」と言い残して……。

 その後、間もなく私は父の事業を建て直すため、政略結婚をし、アランは留学期間を延長した。