――これって……周桜詩月の指導日記

全ての背表紙とファイルに納めたノートの表紙を1つずつ確かめると、10年分の記録だった。

びっしりと書かれた草書の日記の1ページ目には、祖母と初めて会った日の様子が綴られていた。

数ヶ月分を我を忘れ、時間を忘れ、一気に読んだ。

気がつくと、部屋は月明かりに照らされていた。

――これを読めば、あのヴァイオリ二ストの音色が解る

わたしをたった1曲で虜にしたヴァイオリ二スト、繊細で情熱的な演奏をする周桜詩月の全てを知りたいと思った。