生徒会長が目も眉も吊り上げ、わたしを睨みつけている。

「アイツが一生懸命弾いている? 冗談じゃない。俺はアイツの本気の演奏、1度も聴いたことがない。適当に弾いても合格点を貰える奴の演奏など認めない」

「入試の詩月くんのピアノ演奏は本気だったわ」

「幻のラ・カンパネッラか……ふざけた選曲で試験官に媚びて点数稼ぎ。生意気なんだよ」

「あら、やっかみ? 悔しいなら幻のラ・カンパネッラ弾いてごらんなさいよ」

生徒会長が口を歪め険しい顔で、足を1歩踏み出したのと志津子が、わたしの手を掴み引っ張ったのが同時だった。

「小百合、あなた言い過ぎ。何をそんなにムキになっているの。あなたが親の七光りと言われたわけではないのに」

わたしは志津子の言う通りだと思ったけれど、気持ちが鎮まらず、思い切り叫んだ。

「詩月くんは周桜Jr.で終わるような人じゃない。親の七光りなんて言わせないわ」