窓を開けたり扉を開けたり、白いネコを探したけれど結局、見つからなかった。

「あっ小百合。お母さんの部屋、冷房を消して窓を開けてきてちょうだい。あの部屋、夕方からは良い風が入るから」

「はーい」

渋々と返事をし、部屋に向かう。

扉を開けると、部屋全体が茜色に染まっていた。

冷房を消し、窓を全開にして網戸を閉めながら、手が止まる。

1枚張りの大きな窓の透けたレースカーテン越しに夕日が照らす街並みが見えた。

「すごくきれい」

網戸を閉めるのがもったいないと思いつつ、ゆっくりと閉める。

夕日で白いピアノもオレンジ色に染まっていた。

本棚には整理整頓され、背表紙に年と月を書いたファイルが幾つも並んでいる。

1冊、手に取りページを繰ると日付と曲目、練習内容、会話が細かく記されていた。