「ったく、人一倍体が弱くて登下校さえ、毎日おふくろさんに送迎してもらっているくせに」

無茶をしたと言うほどのことかと思ったが、体が弱いの一言は胸に突き刺さった。

周桜詩月の家は、ここから歩いて20分ほどの距離だ。

祖母の家もここから近道をすれば、15分も掛からない。

「ネコを追って電車に乗ってなんて信じられない。いくら知っているネコだからって」

緒方さんの甲高い声に、同感だと無言で頷く。

「わからなくはないわ。あのネコ、周桜くんの演奏が終わると居なくなるし、周桜くんの演奏にしか鳴かないのよ」

永山さんは言いながら、スマホ画面を開いてわたしに向けた。

「あっ」

黒いグランドピアノの上に座ったスカーフを巻いた白いネコと、ヴァイオリン演奏をしている周桜詩月の写真だった。

――やっぱり、あのネコだ

一瞬、息が止まり、待ち受け画面を凝視した。