午後四時…

帰る為に地下鉄の駅のホームに向かう…


彼女の口数は少ない。

きっと、寂しいのだろう…

今は分かってるけど

最初の頃は

僕の気持ちの一方通行なんだろうかと

心配になった。

でもそうじゃなかった。

彼女は素直じゃない。

ただ、それだけだった。

何処が可愛いのかと

よく聞かれるけど

素直じゃない

それが可愛い。

言いたいのに言えなくて

少し、拗ね気味に落ち込んでる姿が…


気付いてるけど

気付いていないふりをする。

僕が

「寂しいの?」と聞いて

彼女が

「…うん」と答えるのも
嬉しいのは嬉しい。

だけど

彼女から言ってほしい…


でも

今日も

何にも会話がないまま
ホームに着いて

改札を通る…

「じゃあ、また連絡する」

「うん」

そっけない会話の後歩き出した。

彼女は僕の姿が見えなくなるまで見送ってくれる。



〇〇

………………

何か

呼ばれたような気がし
て振り返った。

彼女が

物寂しいような表情を
浮かべて頑張って笑っ
て手を振っていた。

その顔が

とても愛しくて

嬉しくなった。

意地悪してごめん…

言葉に出して

言わなくてもいいよ?

顔に全部書いてあるから…

僕は

乗るはずの地下鉄を見送って

彼女のもとへと

足を向かわせる。

「そんな顔で笑うなよ」

彼女に向けて言うと

周りの音で

声が聞こえないから

首をかしげて口元を見つめていた。

その姿が

更に愛しく感じて

彼女を抱きしめて言った。

「大丈夫。分かってるから」




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