「弟は体調を崩して家を出られなかったから、ビデオに撮ってくると約束して僕はコンクールに出掛けた。だけど、弟はみんなの制しを振り切って僕の姿を見に来た。それで…」

「…うん」

さきほどよりも、涙と震えが激しくなっていた大翔を抱きしめずにはいられず、抱きしめたまま続きを聞いた。

弟は自分のせいで死んだ。弟の性格を考えたら、無理をしてでも見に来る事くらい分かるはずなのに、コンクールに浮かれている自分が居たと、呟いているような小さな声だけど、その中には自分を責めてほしいという思いがあるような語り口調だった。



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