無愛想天使

「…隼人の匂いがする」

「えっ…」

今は冬。

外へ出る為に手にしたコート。

昨日も着ていたからか、ほのかに隼人の香水の香りが舞い上がったらしい。

「乃々香ちゃん、こっち向いて?」

「…」

「…泣いてもいいから」

どうしていいのか分からなかったけど、ここでこの人の前では泣いてはいけないと思った。

だけど我慢が出来なくてたくさんの涙が溜まったままの瞳で上を向いた。


「僕ならこの涙を嬉し涙に変えられるよ?だから…」


聞き終わる前に限界がきた。



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