無愛想天使

家にもピアノはあるけど、今まで大切にしてきた物が目について、色々考えてしまうから、ここに来た。

先生は、弾き終わると次の曲をリクエストしてくるくらいで、あとは私の姿を眺めている。

昨日も何にも聞かなかった。

ピアノの音しかしないこの部屋に人の声がプラスされた。

「こんちは〜」

笹本さんだ。

ニコニコ顔で入ってきたけど、いつも以上に笹本さんと話す気分にはなれなくて目もくれず、弾いていた。

笹本さんが来た事で、自分が居なくても私が一人になる事はないと思ったらしく先生は煙草を買ってくると外に出て行った。

私を一人にしないという約束を忠実に守ってくれている。



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