無愛想天使

覚束ない足どりで先生の待つ、ピアノ教室へと向かう。

扉を開けると、先生の視線が一気に注がれた。

泣いている私を見て一瞬驚いていたけど、すぐに近付いてきて、抱きしめてくれた。


この日初めて、私は人に抱き着いて泣いた―――


次の日私は教室に来て、黙々と弾き続けた。

楽譜通りに強弱や滑らかさを出しているつもりでも、単調な音ばかりが私の指から奏でられ、集中出来ていない、私の気持ちを表している。

音は本当に正直だ。



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