上手く話を誤魔化された気がする……。



こんな高価な指輪をプレゼントしようと思っていた彼女……。

そんな簡単に忘れられるはずない……。








「生徒会長!」


センパイが座る机の正面、その前の扉から出てきた人。


「今度の議題のことでお話があるんですが、今少し大丈夫ですか?」





あ……、あのメガネの人、生徒会副会長だ。





「あぁ、今すぐ行くよ」


そう言うと、センパイは立ち上がった。




「じゃあなヒサ」



「あ……うん」





机の上のノートや参考書を手に取ると、センパイは何かを探す素振りを見せた。



「センパイどうしたの?」



「……ここにあったメモ知ってる?
黄色の付箋なんだけど……」




「それならさっき、丸めて捨ててたけど……」





「マジかっ」


センパイは慌ててゴミ箱を探る。



「あったー!
よかったー、議題のこと書いてた大切なメモだったんだ」



「えー、センパイ自分で捨ててたのにー」








「……俺、健忘症かな……。
色々なこと考え過ぎて、頭ん中いっぱいだし……」




「……大変なんだね……」





センパイはニコッと笑うと、手を振って生徒会室に入って行った。