私、今から詐欺師になります

「っていうか、お前、僕とか言うのなら、その格好やめろよ。
 俺でも見てて不気味だ」
ともらすと、

「でも、僕が秘書辞めたら、茅野ちゃんを秘書にするつもりでしょ」
と言ってくる。

「……いけないのか」

「いけなくはないけど。
 秘書だと人目にもつくから、茂野社長にすぐバレちゃうかもよ。

 真下のフロアなのに、今バレてないことが奇跡だし。

 それに……茅野ちゃん、なにかやらかしそうだから」

 仕事は切れるけど、どっか抜けてるんだよねえ、と玲はブラインド越しに茅野たちの居る部屋を見る。

 確かに。

 そんな莫迦な、ということをやらかしそうだ。

 転んで、客の頭にお茶をかけるとか。
 砂糖と塩を間違えるとか。

 話には聞くが、本当にやる奴居るのかということをやりそうで怖い、と思っていた。