「あの女、天性の詐欺師だぞ」
社長室で、穂積は、昼間の話をし、玲に愚痴る。
「そりゃまあ、茂野社長もお兄ちゃんも簡単に引っかかるくらいだからね」
と笑われ、
「……俺は別に引っかかってない」
と言うと、
「一番メロメロに見えるけど」
と言われてしまった。
「まあ、いいんじゃない?
茅野ちゃんが居ると面白いしね。
彼女、意外に仕事も速いし、楽なんだよね、此処んとこ」
仕事には厳しいはずの玲がそう言ってくる。
「茂野と上手く別れられたら、正社員にしてあげたら?」
と言われるが、果たしてあの茂野から逃げられるだろうか、と思っていた。
仕事の上でも、なかなか狡猾で、蛇のようにしつこいと聞いているが。
「今日は早い時間にケリがつくよな」
とスケジュールを確認しながら、穂積が言うと、
「なに?
茅野ちゃんと二人で出かけようとか?」
と勘のいい玲が言ってくる。



