お昼休み。
茅野は先にランチの店に行って、注文して待っていた。
穂積は昼にすぐには出られないと言われたからだ。
ああいう忙しい人を相手に結婚詐欺をするとか難しい気がするんだけど。
会う時間もとれないし。
詐欺師の方々は、どうやって、結婚詐欺してるのかな、と茅野は疑問に思う。
そのとき、ガラスの向こうに穂積の姿が見えた。
やっぱり格好いいなー。
颯爽としてるというか。
ただ歩いてるだけなのに人目を引くというか。
此処でこうして、その穂積を待っているのだと思うと、ちょっとドキドキする。
訪れなかった未来が、そこにあるかのように感じられて。
学生時代は疑うこともなく、いつか好きな人が出来て、付き合って、結婚して、という未来を想像していた。
だが、秀行と出会ったことで、望んでいたその平凡な夢は、かき消えてしまった。
まあ、現実ってこんなものだよね、と思いながら、こちらに来る穂積の姿を見る。
今はちょっと幸せな気もするが。
これもきっと、一瞬のマボロシだ。
神様が、私を哀れに思って、ちょっとだけ夢を見せてくれてるんだろう。
そう思うことにした。



