まったくもう~、めんどくさい人なんだから、と思いながら、茅野は結局、秀行の入っている風呂の外。
すりガラス越しに彼の話を聞いていた。
膝を抱え、ひんやりとした珪藻土のバスマットの上にしゃがむ。
お友だちが結婚祝いにくれたものだ。
さんざん自分の話をしたあとで、秀行が訊いてきた。
「で? どうだ。
久しぶりの仕事は楽しいか」
「はい。
とっても」
「そういえば、今日はお前は家で食事をしていないようだが」
キッチンや食器の感じを見て言っているのだろう。
相変わらず、恐ろしい人だ、と思いながらも、膝を抱えたまま、茅野は言う。
「そうなんです。
同じ課の方とお夕食を食べに行ったんです。
とっても楽しかったです。
ちょうどレディースデーで、素敵なディナーがランチくらい安くて」



