私、今から詐欺師になります

 



 三階のバスセンターからの通路を通っていた茅野は、ちょうど開いたエレベーターを見て、早足になる。

 中では佐緒里が手を振っていた。

「おはようございますっ」
と挨拶すると、

「おはよう。
 茅野ちゃん」
と笑いかけてくれる。

「ちょうどよかった。
 秋本さんっ。
 好きな数字はなんですかっ?」

「なに、突然……」
と佐緒里は、今度はなにを始めたんだという顔で訊き返してくる。

「ロトですっ」
と混んでいるエレベーターの中、茅野は、ちょこんと、昨日、秀行に裂かれた広告の数字を写した手帳を見せた。

「ええー。
 うーん。

 そうね。
 3とか?」

「なんで、3なの?」

「初恋の人の出席番……」

 今の誰っ? と佐緒里は慌てて振り向く。

 二人で奥の方で話していたので、気づかなかったのだ。

 扉が閉まる直前に、玲が乗ってきたことに。