あれから五年。
私はそのことをすっかり忘れていた。
私は忘れていたのに。
大賀くんはこの五年ずっと忘れずにいてくれてたんだろうか。
私のことを想っていてくれたんだろうか。
約束を守って会いに来てくれた大賀くんに私は「人違いじゃないですか」と言ったのだ。
なのに、大賀くんは私に笑いかけて、信じて待っていてくれたんだ。
息があがって、足が痛くなってきたけど、走るのをやめることは出来ない。
もうどこかもわからないほど走っていると、道の先に探していた背中が見えた。
「大賀く……翔くん!!」
翔くんは振り返った。
いつもと変わらない笑顔。
「……思い……出してくれたんだね」
腕を引かれ翔くんの体にすっぽりと収まる。


