お前しか見えてないから。*特別番外編*


「今日、楽しかった?」



「うん、すごく楽しかった」



「たまにはいいよな。こういう非日常な感じ」



「うん。温泉もすごく気持ち良かったね」



「だな。ハルが肌スベスベになったとか言って喜んでた。男のくせに」



「あはは、そうなんだ」



話してたらだんだんと、緊張が解けてくる。



他愛のない会話でも、こうしてナツくんと言葉を交わしているだけで幸せだった。



ふいにナツくんが、私の髪に触れる。


その瞬間また心臓がドキンと飛び跳ねる。



ナツくんは長い髪を手ですくい上げると、私の目を見つめたまま微笑んだ。



「髪、いい匂いすんな」



まっすぐな視線にドキドキする。



「あ、ありがとう…//」



「いつもと違う」



「えっ?」



そう言われて驚いた。


匂いで分かるんだ…。



さっき、温泉で花鈴のシャンプーを借りたからかな?


いつも使ってるのとは違うから。



「花鈴の、借りたから…」