ハッピーエンドなんていらない




ついでなので兄に水を届けてやると、軽くお礼を言って兄は水を飲み干した。


「か、彼氏できたんだ…」

兄は心底意外そうな目でわたしを見ていた。


兄はきっと知っていた。

わたしが湊を想っていることを、なんとなくでもわかっていた。

そして兄は幼馴染たちとも仲が良いから、紫苑と湊が付き合ってることだって知っていた。


つまり、わたしが今湊と付き合える状況にないことを知っているのだ。


今までわたしが、湊が好きだからと誰とも付き合ってこなかったこともわかってるだろう。

そんなわたしにいきなり彼氏ができたのだ。

当然の反応なのかもしれない。


「そっか、彼氏か…。

ちなみにいつ?同じ学年の子?」

興味津々な様子で聞いてくる兄に、すっと目をそらす。


なんだか、恥ずかしくてなかなか言い出せなくて。


「えっと、昨日で、相手は雪…です」

ついつい敬語になってしまった。


相手が雪であることに、兄はさらにむせ返った。

よく見知った人物だから余計に。