また、泣きそうになってしまった。

慌てて乱暴に涙を拭うと、そんなことないと再び首を横に振った。


「わたしは、優しくない。

優しくないから、想いが捨てれないでいるの」

溺れていく、湊に。

どんどんと好きになっていくのを知りながら、幼馴染をやめようとはしなかった。


やめるべきだった、紫苑のためにも湊のためにも、わたしのためにも。

だけどやめたくなかった。

幼馴染という言い訳を、どうしても捨てることができなかったんだ。


だけど雪はわたしの髪をそっと撫でてふんわりと笑うと、

「想いは簡単には捨てられない。

それと同時に紫苑への罪悪感を捨てない彩芽は十分に優しいよ」

そんな、優しい言葉をわたしにかけた。


そんなことを言うものだから、その優しさにまた泣きそうになってしまって。


「やめてよ、泣かせないでよ、馬鹿」

震える声で必死に訴えかけていた。