幼馴染なんて、やめてしまいたかった。

けれどわたしは、やめたかったけれどやめたくなかったんだ。


「お待たせ!遅れてごめん!」

「紫苑が、簪が見つからないって探し回っててさ」


ケラケラと笑う湊のお腹を、紫苑が軽く小突く。

「相変わらず、雪は浴衣似合うね」

クスッと笑った紫苑の言葉に、雪は「そう?」と照れくさそうに目をそらした。

そのふわふわとしたお団子には、見たことない、可愛らしい簪が挿してあった。


シンプルだけど可愛らしくって、必死になって探し回るくらい大切なもの。


…そっか、その簪は。


何も飾られていない髪に、スッと指を通す。

幸せの象徴が目の前で揺れる。

雪の浴衣の袖を引いたその指には、シンプルな指輪がはめられていた。

チラッと湊の手を見ると、同じような指輪がはめられている。


きっと、その指輪も。


「…やっぱり、彩芽は大人っぽいなぁ」

うっとりとした紫苑の視線が、やけに突き刺さる。