ハッピーエンドなんていらない




わたしこそ、ありがとう。

伝えたい気持ちはうまく声にならなくて、なんだかくすぐったくて。

結局わたしは紫苑と同じように微笑みながら、

「気にしないでよ、全部わたしのわがままなんだから」

そう言うことしかできなかった。


紫苑が、いつもみたいにえへへと笑う。

わがままでも嬉しいんだと小さく呟いた紫苑の声、わたしは聞こえなかったふりをした。


とりあえずこの時間では固まるまで紫苑の家にお邪魔するわけにもいかず、明日の朝に取りに行くことにした。

明日は10時に集合するため、8時半頃に紫苑とチョコの準備をすることにした。

それから一度家に帰り、はじめは何もないように装ってからあとで渡すことに決定した。

多分2人ずつで別れるだろうから、お互いその時に渡すこととなった。


そのあと、1時間程度紫苑と話をしてから、わたしは家に帰った。

そうして明日に備えて早く眠りについて、また、あの夢を見た。


少年少女が海辺の岩に腰掛けて海を眺めている。

ふと少年の方を向いた少女の口元が幸せそうに弧を描いて、なにか言葉を口にした。