それから、手を見つめていた紫苑は、体育館の中へと消えていった。
…羨ましい、か。
分かりやすく綺麗な言葉で言うならば、“羨ましい”という一言だろう。
だけどきっと、わたしの中で渦を巻くのはそんなかわいい言葉じゃない。
嫉妬、でさえかわいく思えるくらいの、ドロドロとした気持ち。
羨ましいから、妬ましくって、恨めしくって。
紫苑は親友なのに、親友だから、そんな気持ちを抱く自分に自己嫌悪。
頭が、痛くなる。
でもそれを雪には悟られたくなくて、本を適当に選んでから席に戻る。
「それ、なんの本?」
わたしの目の前の席に座った雪が、開いた本を見ながら頬杖をついて尋ねる。
「…なんだろう。多分、友情」
適当に手にとったから内容なんて分からず、表紙と題名、それからあらすじを見てそう言ってみる。
わたしの大好きなホラーでないことは、確かである。


