…そんなこと言ったら、わたしはどうなるの。
湊が好きで、それでも紫苑が好きな湊のために想いを押し殺してきた。
湊と紫苑が付き合って嬉しかったけれど、どうしようもないくらいに嫉妬した。
幸せそうな湊たちを、どれほど見たくないと思いながら見ていたか。
なんだか伝えたくなって、でも伝えることはできなくて。
昨日早退したきり連絡のない紫苑を待つことにした。
休むという連絡もきていないし、多分来るはずだと待っているのだが、なかなか来ない。
紫苑が集合時間に遅れることはほとんどないので心配になった。
それが、集合時間を過ぎても来ない。
たまたま遅れてしまったかもしれないし、連絡を忘れているのかもしれない。
「紫苑、迎えに行く?」
眉を下げて雪に問いかけると、雪はそうだねと言って笑いかけてくれた。
気にするなというように、すっと雪がわたしの手を引いてくれた。
それに少しだけ嬉しくなって、ギュッと雪の手を握りしめた。


