ハッピーエンドなんていらない




紫苑の言葉に、心臓がドクリと音を立てる。

雪にその言葉をそのまま言われたわけではない。

だけど、それと似たようなことは言っていた気がする。

雪のあの時の言葉は、紫苑が言ったように解釈できる気がする。


「うん、まあ…」

ハッキリとは答えられなかった。

曖昧に、なにかを誤魔化すようにそう答える。


紫苑はやっぱりと薄く笑ったあと、目を伏せて少しだけ悲しそうな顔をした。


「あのね、わたし、それが狙いだったの」

えへへ、と笑いながら紫苑がそう答えた。


…それが、狙い…?


よく分からずに首を傾げると、紫苑は困った笑みを浮かべて「えーっとね、」と話し始めた。


「雪はね、小学校の頃、彩芽が湊を好きになったのとほとんど同じくらいの時…。

いや、正確には彩芽が湊を好きだと自覚した直後、くらいからかな。

それからずっと、雪は彩芽のことが好きなの」


…紫苑は、どうやらわたしが湊を好きだと言うことも知っているらしい。