雪を好きでいながら、どうして紫苑は湊と付き合っているのだろう。
湊がずっと紫苑を好きなのは知っている。
わたしが湊を好きでずっとずっと見てきたから、湊が紫苑を見ていたことくらい知っている。
湊と紫苑が付き合ったと聞いたとき、告白をしたのは湊だとすぐに分かった。
だけど、紫苑は雪を好きだった。
それなのに、どうして紫苑は湊の告白に応えたのだろう。
叶わない恋と思っていたから?
ならどうして叶わない恋だと思っていた?
雪が、わたしを、好きだったから…?
浮かんでくるいくつもの疑問。
一つを口にする前にどんどんと浮かんでくる。
混乱しているわたしを見兼ねてか、紫苑は「あのね、」と話を切り出した。
そっと、優しい声で、
「湊と付き合ったのは、雪を忘れたかったのと、雪のためになると思ったからなの」
言葉を、紡いでいく。
…湊と付き合ったのが、雪のため…?
よくわからず首を傾げる。
紫苑はそんなわたしにえへへと笑ってみせる。
「彩芽さ、雪に言われたでしょう。
『お互い、忘れるために付き合おう』みたいなこと」


