「ねぇねぇ、遊佐さんって呼ぶの、何か他人行儀な感じしない?だから、楓って呼びたいなぁ〜」
「もちろん!ていうか是非!」
「よかったぁ。じゃぁ楓、ね!」
今は昼休み。美香ちゃんから声を掛けてくれて、私たちは中庭でお昼を食べている。
「やっぱり、春は気持ちいいねぇ〜。明日も晴れてたらいいね。」
「うん。私、季節だと春が好きだなぁ。」
私は心からそう思い、自然と口に出していた。
「春は出会いの季節っていうけど、美香ちゃんみたいな素敵な人と出会えて、私は恵まれてるなぁ。」
「楓ぇ〜。なに急に〜。照れるよ。そんな風に言ってもらえるのは初めてだなぁ。私も楓と友達になれて良かった。」
私たちは目が合い、お互い恥ずかしそうに微笑んだ。
「なぁ、お前さ、楠木さんってめっちゃ可愛いと思わね⁇」
「えー、そうか?別にあの位ふつうじゃね。」
「あーまじでモテる奴はこれだからほんとに。あの子を可愛いとも思えないなんて可哀想な奴だな、モテるのに。」
「うっせ、けなすのか褒めるのかどっちかにしろ。」
「あーじゃぁ、けなすわ。可哀想な奴〜。」
「うっせ黙れ。」
「はぁ⁇お前がどっちかにしろって言ったんだろー!」
「?美香ちゃんどうしたの⁇」
「いや、何かあそこ賑やかだなぁと思って。」
「ん⁇あれ?あの窓際の?うちのクラスの男子⁇」
「まさか、楓覚えてないの⁈芹沢君だよ!芹沢海斗くん!学年でもかなりイケメンでクールって騒がれてるのに!」
「あー、全然知らなかった。そんなに有名なんだ。」
「うん、なんかねあんなにカッコいいのに誰の告白も断るんだって。誰とも付き合わないみたいよ。」
「ヘェ〜。そうなんだー。」
「あー!ちょっと、楓興味示さなすぎ〜!」
「え、そんな風に見えた⁇べ、別にそんなこたぁ〜ないよぉ〜」
「ほらぁ、声が裏返ってるし、バレバレ〜。まぁ楓が興味ないのは良いんだけど。」
「いいんかい!ってなんで?」
「え、っと何ていうか私…芹沢くんに一目惚れしちゃって……」
「え、そーだったんだ!」
「うん、誰にも言わないでね?楓だから話したんだよ!」
「う、うんわかった。わかりました。絶対言わない。」
私は人生初の恋バナというやつに感激し、堅い約束をした。
「ふふ、楓ってたまに大袈裟だよね。そこが良いとこなんだけど。」
「ぁ、ありがとう。そうだ、私協力するよ!」
「えぇ⁉︎いいよぉ!だって誰とも付き合わないって話だし…」
「いや、そんなわからないのに諦めるなんてもったいない!向こうだって高校生になって考え変えてるかもよ⁇」
「それもそうかぁ〜、じゃぁお願いします♪」
「うん、任せて!」
こうして人生初の楽しい昼休みが終わった。